マイリンク集

盲目の猫マーヤ逝く

201005_055443_ed.jpg201005_055456_ed.jpg
日曜日の夜。


「お父さん、ちょっと」


洗面所のマットに横になっていた、マーヤの介抱をしていたかみさんに呼ばれた。


「口で呼吸し始めた」


「コトを呼びましょう」


マーヤをリビングに移し、コトを呼んだ。


三人で口で浅い呼吸をし始めたマーヤを摩り、声を掛け続けた。


「ありがとうね」


「家に来てくれてありがとうね」


「マーヤのこと、忘れないよ」


彼女への数々の感謝を伝えた。


混濁しているはずの意識のなか、それでも娘が声をかけると喋ろうとして声を出した。


「喋らなくていいよマーヤ」


「大丈夫だよ、わかってるよマーヤ」


家族全員に身体を摩ってもらい、最期には娘の手の平に頭を載せてもらい、静かに息を引き取っていった。


12歳、両目が無いという障害を持ち、何故か東大通りの交差点の真ん中にうずくまっていた小さな小さな子猫は、偶然ロッキーに拾われ、シュナとテア、ロッドユールという家族達に巡り会い、彼らにも大切に育てられた。


何度も大手術に耐え、朗らかに家族に甘えて過ごせた。


「今頃きっと、シュナ達が迎えに来ているね」と言うと


マーヤの遺骸を抱いた娘が泣きながら言った。


「きっと、初めてシュナ達の顔を見てる」


そして長い間、家族でマーヤとシュナ、テア、ロッドユールの思い出を話した。


シュナが格別にマーヤを大切にしたこと、マーヤを可愛がり過ぎたテアが、マーヤの顔を毛繕いするうちに髭を全部かじって切ってしまったこと、ロッドユールが大好きでじゃれ合っている内に、ロッドユールが外から運んできたノミにたかられてしまい困ったことなど、思い出は尽きなかった。


かみさんがボソッと呟いた。


「東大通りに居たっていうのは、悪意で置かれたんだと思う」


「お父さんもそう思う」


でも、その悪意は結果的に彼女自身の運命を切り開くきっかけとなった。


今はただ、彼女の生涯が幸せなものであった事を願うばかりだ。


今夜は家族でマーヤを送りにゆく。


彼女の骨は、大好きだったシュナ達の真ん中に置いてやろうと思う。

マイリンク集

マイリンク集

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント